【前半】私たちは、ダメ男にこうしてハマっていく

「どうしてそんな男と付き合ったの?」
「どうして出会った時に気づかなかったの?」

こっぴどいめに遭ったあと、こんな言葉をかけられるたびに思う。

「だって出会った時は、別人だったんだもの」

ダメ男はいつも、王子様のように現れる。
大抵のダメ男は、運命の人ではないかと本気で錯覚させるような素敵な男性の皮をかぶって、私たちの前に現れるのだ。

整った容姿に愛想の良い振る舞い。そして、とんとん拍子にすすむ幸せな恋愛関係。

「こんなに良い人にどうして相手がいないのだろう」と思うほど、彼らは完璧を装って私たちの心を魅了する。

過度ともいえるその優しさを信じない選択肢もあるにはあるが、恋愛初期には麻薬物質と同じドーパミンが大量放出されているわけなので、少しくらい違和感を覚えても「とっても良い人」として飲み込んでしまう。
これを、罪と呼ぶには悲しい。

さて、まずはここで、私の言う「ダメ男」の定義を述べたいと思う。

-ダメ男の定義-

存在や言動によってあなたの自尊心を奪い、週一以上で「どうしてこんな人と付き合ったのだろう」と思わせるような男。

ダメ男にも様々なタイプが存在するが、ここでいうダメ男たちは、時に暴言や暴力を使ってあなたの自尊心をめちゃくちゃにしようとするので、たちが悪い。

いつの間にか「完璧」の殻を剥いだ彼らは、最初の優しさはどこへやら、あなたを平気で傷つけるようになるのだ。

「どうしてそんなことができるの?」と、理解ができなくなるような、罪悪感を感じていないかのような振る舞いをすることすらある。

しかし、一度そうなった時には、抜け出すのが難しくなってしまっているのがダメ男との恋愛関係の特徴。

最初に魅力を感じていればいるほど、運命を感じていればいるほど、解消するのに困難を要するのがダメ男との関係だ。

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モラルハラスメントドメスティックバイオレンスに該当するケースも多く、彼らは長期間にわたり、私たちを苦しめていく。

訪れる魔の三ヶ月

先ほど「いつの間にか殻を剥いで」とは言ってみたものの、実はダメ男のボロが出て来る時期は、共通していたりする。私はその時期をこう呼ぶ。

「魔の三ヶ月目」だ。

ダメ男との恋愛関係の特徴は、先にも述べた通り、とにもかくにもこの「付き合って三ヶ月」まではスムーズなところにある。
「こんなにうまくいく!?」ってくらい、時には少女漫画のように、幸せな展開が続いていく。

あなたは彼らと、「マッチングアプリ」や「相席屋」や、「合コン」で出会う。
会話が弾み、連絡先を交換し、スムーズにデートに誘われ、魅力的なデートを数回する。
体の関係になることもなく、もしくはなったとしても、さわやかな好意を感じた後、問題なく告白される。

だからこそ安心しきって、今までにないほどの幸せを噛み締めるのだ。

そして、この束の間の幸せが崩れ始めるのが「魔の三ヶ月目」である。

数多くのダメ男に共通するのが、「ハンター気質」である。

手に入るか入らないかの瀬戸際で、ゲームのように恋愛をすすめるのが得意で、大好きだ。
3ヶ月目までは、そんなハンターを刺激する新鮮なドーパミンが、彼の頭の中にはドバドバ放出されている。

この期間に言われる「好きすぎる」や「こんな気持ちになったのは君が初めてだよ」という言葉は、彼らの中ではあながち嘘ではなかったりするのだ。
心から幸せで、心からあなたを愛しているこの期間、彼らはありったけの愛情を表現する。

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だがしかし、ここからが問題なのである。

デートやセックスの新鮮味がなくなった頃、本来恋愛関係であれば、二人の間にあふれていた脳内物質「ドーパミン」というワクワクドキドキ麻薬が、「セロトニン」という安心物質に変換されはじめる。

最初は「痛いところなんて目に入らない」だったのが、「痛くても許せる」という状態になってくるのだ。
この「セロトニン」は、子犬を抱きしめた時にも放出されるといえば、どのような感情か想像がつきやすいかもしれない。

私はこの脳内物質の変化こそが「好き」から「愛」への変化だと思っているのだが、ハンター気質の彼らにとってこの変化は、「興奮」から「退屈」に変わる瞬間であるほかならない。

今まであなたに感じていた「興奮」や「好意」、「新鮮さ」 を徐々に失い、それと同時に釣った魚に餌はやらない状態が始まる。

彼らにとって完全に手に入った女は所有物であり、「退屈さ」がすすんでいく一方の、厄介な存在なのだ
そして、態度を変えてもあなたが受け入れてくれると判断すると、どんどん化けの皮が剥がれていく。

 

数ヶ月たったころに、あなたはきっとこう思っているはずだ。
「最初の時のこの人はどこへ行ったの…?」

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こちらの話に興味を持たず、バカにしたような態度をとり、デートに行くのを嫌がり、家事をおしつけたり、命令するようになったりする。

さらにたちの悪いことにこういった奴らはあらたにドーパミンの快感を得るためにターゲットを探しはじめ、浮気や二股をしたり、その後に平気で乗り換えたりもする。


彼らにとってあなたは、「使い古したタオル」
であり、使い勝手は良いからわざわざ捨てる気もおきないが、できれば新しいふかふかのタオルが欲しいのだ。

そして陥いる呪いのワード「いつか昔に戻ってくれる」

さて、出会った頃に完璧だった彼がダメ男に成り下がった。
ここまでの過程を友人に相談したあなたは、きっとこう言われたであろう。

「別れなよ」

誰に相談しても、どうやって相談しても、帰ってくる結論はたったひとつ。
「別れる以外にあなたは幸せになれない」。
そして同じようにこんなことを言われるかもしれない。

「どうしてそんな奴が好きなの!?」

わかっている、わかっているのだ。
客観的に見ればどうしようもない男だということも、別れる以外に選択肢がないことも。
あなたは身をもって分かっているのだ。

 

だけど、分かっていても別れられないところに、ダメ男の恐ろしさがある。

 

どれだけ今が酷くても、苦しい目に遭っていても、あなたの頭に浮かんで来るのは「出会った頃の彼」なのである。優しくて、どんな話でも頷いて親身に相談に乗ってくれて、くだらないことで笑いあえて、誰よりも私を愛してくれた彼。

「もしかしたら、彼が変わってしまったのは私のせいなのではないだろうか」

「私が努力をすれば、またもとに戻ってくれるのではないか」

あなたはいつのまにか、そんな風に考えてしまうようになるかもしれない。

あなたの愛したダメ男がモラハラやDVであなたを縛っていたら、なおさらこのような思考回路が出来上がってしまう(DVやモラハラについてはここで詳しく言及しない)。

そして次第に、友人にも呆れられはじめて、相談ができなくなってくる。
あなたはネットを使って、この状況の「突破口」を探そうとする。

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どうすれば彼は以前の優しい彼に戻ってくれるのか。

どうして彼は変わってしまったのか。

うまく続けていく方法はないのか……。

だけど、いくらグーグルの検索履歴を全部青色に変えたって、答えは出ない。

そうして過ごす不毛な日々が長くなればなるほど、次はまた別の「別れられない」要素が出てくる。
「ここまで頑張ったのだから」という執着である。

ダメ男だって、常に最悪な状態が続くわけではない。時々機嫌が良ければ優しい顔を見せるし、偉そうなその態度についても、「親身になってくれている」と感じることだってある。

そういう小出しの蜜にすがりながら長いこと一緒にいると、「この人に耐えられるのは私だけだ」「ここまで耐えたのだから改善するまで一緒にいよう」といった気持ちが湧いてきてしまう。

 

ひどい時には、「私がこんなに不幸になったのだから、私と別れて他の女と幸せになるなんて許せない」という気持ちで執着することもある。

 

ここまでいくと明らかに不健康であるが、本人は意地になっているので、やめられない。

そうして「別れなよ」と伝えてくれる友達には愛想をつかされ、孤立していく。
孤立してけば尚更「私には彼しかいない」という錯覚に拍車がかかり、抜け出せなくなっていくはずだ。

ダメ男は、こうしてあなたの心を、人生を、破壊していくのである。

出会った時に見極めろ。 だってダメ男は治療不可だから。

さて、そんな「ダメ男」についての相談は、恐ろしいほどに多い。

一度もダメ男被害に見舞われていない人からすれば頭に「?」が浮かぶような記事かもしれないが、彼らは人を魅了するのが、おそろしくうまいのである。

そしてこのような状態に陥っているにも関わらず、私のもとに届く相談メールはいつも、こう締めくくられている。

「彼と別れずにやっていく方法はないでしょうか」

友人に相談して愛想をつかされ、ネット中をサーフィンしても答えは見つからず、最後の最後に藁にもすがる思いで私に「突破口となるノウハウ」を求める皆様に悲しいお知らせだ。

一度「ダメ男」になった男を元に戻す方法は、ない。

あなたが全くの別人になってもう一度誘惑しなおすくらいしか方法はないし、「全くの別人になること」は、残念ながら今の時代、美容整形を使っても不可能だ。
そして後半に詳しく話すが、人間は誰しも二面性を持ち合わせている。

「ダメ男」というのは、その人の二面のうちの一面なのだ。

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もちろんその反対側は「良い男」であるが、彼らが「ダメ男面」であなたに接する場合、それはあなたが彼にとって「本気の対象外」であることは明白だ。
そして、一度彼の「ダメ男面」を引き出してしまった場合、彼をひっくり返すことはほとんど不可能なのである。

ダメ男は、不治の病だ。

発症してしまった彼自身も、一緒にいるあなた自身も、どす黒く、どんよりしたその病に侵されてしまう。

一度好きになってしまったら抜け出すのが難しい「ダメ男」という生き物にはまらないためにも、まずは一息つき、今目の前にいる彼が本当に運命の相手なのか、しっかり見極める必要がありそうだ。

 

さて、後半では、そんなダメ男にまつわるお話をもうひとつ。

あれだけ必死で尽くしてもダメだったあいつが、次に付き合った女の子には尽くしまくり、
結婚にまで発展した。

彼を落とすあの子はどんな女の子なのか、そしてあなたとの違いは何なのか、を紐解いていく。

コラムニスト

yuzuka

 

 

恋愛エッセイを中心に書いている作家、コラムニスト。著書に「大丈夫、君は可愛いから。君は絶対、幸せになれるから」(KADOKAWA)「LONELY?ねえ女の子、幸せになってよ」(セブン&アイ出版)がある。書き物以外にもイベント主催や舞台プロデュース、オウンドメディアの編集長など、幅広い分野で活動している。

Twitter:@yuzuka_tecpizza