
作家
マドカ・ジャスミン
持ち前の行動力と経験を武器に、体当たりライターとして注目を浴びる。また性についてもオープンに語る姿が支持を集め、自身も性感染症防止の啓蒙活動を行う。
近年では2018年に著書「Who am I?」(KADOKAWA) を刊行。テレビ番組や雑誌への多数出演・アパレル業に携わるなどマルチに活躍中。
過去出演番組:『山里と100人の美女』(TBS系)『それ、古いっすよ』(テレビ朝日系)『おしゃべりオジサンと怒れる女』(テレビ東京系)『指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙』(AbemaTV)
Twitter:@mdk_jasmine
「ま、身体以外の相性が悪かったんだろ。縁も無かったんだ。次いこ、次。」
今からおよそ三年前ぐらいだろうか。
セックスに及んでから連絡の頻度が低くなった男性とのLINE画面を見ながら、私はそう思う日々を過ごしていた。
悲しみが皆無だったとは言わないし、良いセックスを提供してくれた相手なら尚更名残惜しかったけど、如何せんセックスは一人では出来ない。
二つの身体が無ければ成り立たないことは勿論、お互いが同等の熱量を持っていなければ及べない行為だ。
私がいくら「セックスしよう!」と熱く強く主張したところで、相手にその気が無ければ意味が無い。
数日前にこれでもかと感じた体温をじれったく思い出しながらも、また私は別の男性との逢瀬を繰り返しに夜の街へと足を運ぶのだった。
とにかく沢山セックスしたいけど…
時は流れ、私も今年で24歳。
この秋で交際歴二年となるパートナーもいて、幸運にも恋愛のいざこざにリソースを割く必要が無く、コンスタントに増え始めた仕事をバリバリとこなす毎日を送っている。
ついこの前、18歳から20歳まで働いていた職場の元同僚たちと集まった時、「ジャスは飲み会の時に男とよく消えてたよね!」と言われ「そんなこともやってたなぁ」とお酒と男性に溺れまくっていた過去を思い出すぐらいには、だいぶ落ち着いてしまった。
交際歴が二年になるということは、その期間はパートナーとしかセックスをしていないことになる。
この世の中には、パートナー公認のセフレがいるなんてカップルもいるけど、私たちは所謂世間一般的なカップルなのでそういったこともない。
今の彼と付き合う前は、数日か一週間おきに別の男性とセックスしていた私は、今の状況が時々愉快に思えてきて、思わず一人で笑ってしまう。(怖い)
これで彼との性生活に大きな不満があれば、こうして笑うことも出来ないだろうから幸せだと思う。
が、それと同時にこう考えてしまっている自分も存在することに気がついた。
「最近のセックス、
まともな前戯をされていないような…」
回数を重ねるたびに募るイライラ
そもそもの話、私の彼はあんまり性欲が無い。
性欲が無いというか、ごくごく普通なのだ。
逆に私とくれば、自他共に認める性欲魔人。
四六時中シていたいし、ご飯を食べられないよりも、セックスを出来ないほうが間違いなく精神が超絶荒む。三度の飯よりもセックス。睡眠よりもセックス。それぐらいスーパーサイヤ人並みに性欲が強い。
セックスしたら悩みの8.5割は解決するから、皆セックスしたほうがいいよ。もっとしようよ。頭も爽快、気分爽快。肌艶も良くなる。良いことしかない。最低週3は致すべし。これも立派なメンタル&健康管理。
— マドカ・ジャスミン (@mdk_jasmine) September 6, 2018
本来ならば、毎日か、少なくとも週5はセックスしたいが、彼は首を横に振り「多くても週2や3が限度」と言う。
セックスフルタイム出勤を断られ、泣く泣く学生バイト程度の回数になってしまっているのが現状だ。
しかも、週2か3の希望だったのにも関わらず、ブラックバイトかの如く、基本は週1程度に留まっている始末。おかげで週2が続いたり、二夜連続だったりすると、逆に怖くなってしまうようになってしまった。
まあそれでも、毎日ミシュランの星付きレストランで食事をしていれば、当然有難みも減ってしまうだろう。これは仕方ない。
それと同じく、セックスも毎日だと飽きるから「週1や2が実はちょうどいい」と自分で自分を納得させていたが、それは違うのだと感じてきた。
行きずりの相手とのセックスは、一部のオナニー野郎を除いて、みんな平均以上に丁寧な行為を心掛けてくれていた。
行きずりの相手…つまりは他人なのだから、最低限は気遣うのだろう。キスから前戯、挿入という順序を真面目に守る人ばかりだった。
彼も交際したての頃や旅先だと、非常に丁寧で気持ち良いセックスをしてくれる。
まさにフルコースにとびっきりのワイン付き。
だけど、自宅での行為はマクドナルドよろしくとも言えるようなファストフードばりのセックスが圧倒的に多い。
相性は良いから気持ち良いは良いけど、キスどころか手技も無く、ちょちょちょっと胸を触って即挿入なんて夜も…。
気分が頂点まで昇らないまま挿入されてしまい、身体は快感を覚えるものの、頭は通常モードのままというジレンマの中で行為が終わってしまうのだ。何というセックスの無駄遣い。
そんなことを繰り返されているうち、セックスしたいのに即挿入スタイルだったらイライラが募る、という悪循環さえ生まれてしまった。
「濡れればOK」じゃないわボケ!
普通の女の子であれば、押し黙り、どんどんイライラを心に溜めるに溜めて爆発させてしまうことが多い。むしろ、そういう女性が大多数を占める。
だけれど、家族や親族の感情さえもガン無視し、Twitterや地上波番組で堂々とセックスについて発信している私はそうはいかなかった。
ある日、彼にこう言った。
「さすがにキスも無く、胸だけ触って挿入は嫌だわ」。
実にシンプルな言葉である。
彼は「うーん」と考える素振りをし「そんなことも無いけど」と口を濁した。この感じだと、本人にも自覚はあるらしい。
ただ、私よりもこのことを重大視していないのはたぶん確実だろう。認知の誤差を埋めるのは難しいにも程がある。
思うに彼だけではなく、世の中の男性の何人かはこういう価値観を抱いているのかもしれない。
『前戯=女性器を濡らす為のフロー』
簡単に言ってしまえば、「濡れればOK」ということ。
女性は快感を覚えれば、女性器から愛液が溢れ出してきて、それを潤滑剤として挿入に至るわけだから、とにかく濡らせることに注力する。キスも、手技も、口技も、すべては挿入の為に行う。
セックスは挿入であり、挿入はセックス。
挿入が無きセックスはセックスではない。
……敢えて言わせてもらおう。
違う!!そうじゃない!!!!!!
節子!!!!!それセックスやなくてオナホールを用いたセックスと同じや!!!!!!!!
女は精神的に快感を覚える生き物
快感を覚えれば、女性器から愛液は溢れてくる。これは事実だ。
しかし、いくら苦痛を伴う行為だとしても、感情と反比例して愛液は溢れてくる。
何故かというと、愛液は性的刺激によって分泌されるが、身体の防御反応としても分泌されるからだ。なので「濡れている=快感」の方程式は、いついかなる時も当てはまるわけではない。
身体的刺激やそこから派生する快感も大事だけれど、その土台となるのはやっぱり精神的快感。
よく「男性は目で感じ、女性は耳で感じる」と比喩されることもあるぐらい、女性は間接的に性的興奮を感じる。
例えば、前戯を始める前にハグやキスといった軽いスキンシップを重ねたり、行為中に耳元で囁かれたりすることで女性は快感を覚える土台を作っていく。
また、副交感神経を優位にする…つまりリラックス状態であるとさらに快感を覚えやすくなる。これは女性だけではなく、男性にも言えることだ。
- 二人でゆっくりお風呂に入る
- 軽くマッサージをし合う
- 間接照明にする
- お香やアロマキャンドルを焚く
こういったことを行うだけで女性の感度はだいぶ変わってくる。その変化は顕著なほど。
だからと言って、「よし!濡れた!挿れる!」とすぐに挿入しようとするのは、本当にもう勘弁してくれ。今まで何を読んできたんだ。
セックス中、女性器を濡らす為だけに前戯するのはやめようよ。女性は気持ちが昂ぶれば自然と濡れるのだから、適当に乳を弄って、手技して、濡れたら挿入みたいなのは本当にドン引き。せめて25歳までよ、そんなダっさいセックス。挿入だけを求めるなら、オナホールでも使って自慰行為に勤しんでなさい。
— マドカ・ジャスミン (@mdk_jasmine) July 4, 2019
あくまでもセックスはコミュニケーションなのだから、焦らずにお互いを観察し合いながら、ゆったりと行うのが基本中の基本である。
何度も言うようだけれど、それが出来ないのなら一人でオナニーしとけ!
心身の満足が二人の関係をより良いものとする
勿論、身体的快感に全振りするセックスをする日があってもいい。
否定はしないし、何なら「もうぶっ壊して!!!」みたいなドぎついプレイをされたくなる時もある。最近忘れがちになるけど、私はドMなのだ。バチバチに心も身体も征服されたい。(うるさい)
けれど、そんなハードな行為を行うには相手との信頼関係が何よりも大切で、じゃあその信頼関係を築くとすれば、日々のコミュニケーションが重要となる。
ということは、普段から相思相愛なセックスが出来ない相手とはハードな行為なんて出来るわけがないし、されるのもごめんだ。
人それぞれ性的嗜好は違うし、カップルの数だけセックス観も違う。これは当然のことだ。
だからこそ、どんなカップルでもお互いを尊重し、素晴らしいコミュニケーションとしてのセックスを重ねることが、信頼関係の構築に繋がっていく。
そんなカップルが増えていけば、世の中はもっと楽しくなるのではないのだろうか。
あと、これを読んでいる女性の皆さん。
パートナーに性についてのモヤモヤを抱いているなら、積極的に打ち明けてみては?
この時代、女性が性についてを主張してはいけないなんて価値観はもう捨てちゃっていい。主張して、伝えて、パートナーから軽蔑されるなら、相手がそこまでの人間だっただけ。
セックスの主役はどちらか片方じゃなくて、どちらもなんだから。