
作家
マドカ・ジャスミン
持ち前の行動力と経験を武器に、体当たりライターとして注目を浴びる。また性についてもオープンに語る姿が支持を集め、自身も性感染症防止の啓蒙活動を行う。
近年では2018年に著書「Who am I?」(KADOKAWA) を刊行。テレビ番組や雑誌への多数出演・アパレル業に携わるなどマルチに活躍中。
過去出演番組:『山里と100人の美女』(TBS系)『それ、古いっすよ』(テレビ朝日系)『おしゃべりオジサンと怒れる女』(テレビ東京系)『指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙』(AbemaTV)
Twitter:@mdk_jasmine
ダメ男から離れられない女性たち
女友達から恋愛相談を受けていると、明らかに「何故そんな男を好きになるのか…」という内容も少なくは無い。
客観視すれば、どうしようもなく自己中であったり、支離滅裂な言動だったり、一言で言えば「ふざけてる」だ。
それでも、相談主である彼女たちは、いくらアドバイスをされようが「でも、好きなんだよね」に帰着してしまう。
実際に男女問わず、人は恋をすると、脳がチンパンジーになってしまう。
恋に落ちると理性や常識を失う?
恋は盲目とは言うけれど、それは科学的にも実証されているのだから、人間は進化しているようであまり進化していないのかも知れない。
しかし、恋は盲目のまま相手から搾取され尽くされ、気が付けば何もかも失い、しまいには相手からポイっと捨てられてしまうなんてことも現実にはある。
いや、捨てられるのはマシな結果だ。
もっと最悪なのは、延々と搾取され続けられることなのだから。
『恋愛依存症』という共通点
さて、恋愛に悩む女性たちの話を聞いていると、ある共通点が見えてくる。
それは『自己肯定感の低さ』で、不思議なことに100人中90人以上が美しいや可愛いと評す容姿である女性からでも、これを感じるタイミングが多々ある。
容姿も良く、仕事も出来る。
言わば、“勝ち組”の女性たちが何故苦しい恋愛に身を投じ、そこから抜け出せないのか。
そんなことを考えている時、私はある言葉を知った。それは、『恋愛依存症』。
自覚しにくい依存症の1つ
『恋愛依存症』と聞くと、様々な人たちとの恋愛を繰り返し、問題を抱えるような比較的ライトな印象を受けるかもしれない。
アルコール依存症や薬物依存症、ギャンブル依存症と聞くと、人は「なんて重大な問題なんだ 」となるが、依存対象が”恋愛”となった途端にライトな印象…に捉える人が多いだろう。
しかし、内容は極めて深刻でお酒や薬物と違い、分かりやすい依存対象ではない為、自覚も他者からの指摘も難しい。
尚且つ、恋愛を題材にした様々なコンテンツが溢れているにも関わらず、人は恋愛をそんなに難しく考えようとせず、娯楽要素の強いコミュニケーションとしての価値が強い。
確かに恋愛の本来の意味である生殖行動がマストではない現代において、恋愛もマストではない。
今や4人に1人が離婚をするし、少子化は進んでいるし、責任という意味での恋愛なんて自分の足枷にしかならないという考えも否定は出来ない。
事実、仕事の悩みは重大視されても、恋愛の悩みとなると軽視されてしまうことも少なくは無い筈だ。
まず、恋愛に依存している可能性を受け入れる
たかが恋愛だが、されど恋愛でもある。
逆に今自分が抱えている恋愛の悩みを他人の私情ではなく、きちんとしたエビデンスを基に分析し、解決へと導けるのならあなたはどうするか。
前述した『恋愛依存症』という単語に少しでも反応し、頭の中で「自分は違う」と呟いたのであれば、どうか怖くても逃げないで知識を得てほしい。
もっと言うと、知識はあなたを虐げもしなければ、否定をするものでもない。知識は自分の盾だ。
仮に今、自分が『恋愛依存症』だとしても、それで自分を責めるのも違う。
先ずは、そういう状態かもしれない自分を受け容れる。それだけでいい。その前提を基に話を進めていこう。
『恋愛依存症』とは
『恋愛依存症』は、別の表現では共依存という。
共依存とは、端から見たら目にも当てられない関係性である「酷い相手(加害者)」と「被害者」が、実は心の奥底で互いを必要としあっている状態のことだ。
- 恋人からDVを受けているのに別れずにいる女性
- 配偶者からの暴言(モラハラ)に耐え忍ぶ妻
などが例として挙げられる。
身近な人たちが「早く逃げろ!」という状況でも、何故彼女たちは逃げられないのか、逃げようとしないのか。
それこそが恋愛依存症(共依存)の性質を物語っている。ちなみに男性よりも、女性の方が恋愛依存症になりやすい。
恋愛依存症の5つの特徴
共依存の定義は研究者によって異なり、明確な定義があるわけではない。
共依存症問題の第一人者メロディ・ビーティは、「共依存者とは、特定の他者の行動に左右されていて、かつ、自分は相手の行動をコントロールしなければならないという強迫観念にとらわれている人のことである」と定義している。
具体的に言えば、以下の特徴が挙げられるので自分の状態と照らし合わせてみてほしい。
- 「必要とされる」ことがすべて
- 「救済者」になりたいという願望がある
- どれだけ酷いことをされても相手を放っておけない
- 常に自分を後回しにしてしまいがち
- 現実を直視できない
簡単にまとめれば、自分の価値が相手ありきになってしまっていることだ。
どんなクズみたいな相手だとしても、自分によって変わり、より良くなってほしい。
しかし、そうは思いながらも、相手が駄目であればあるほど、自分が必要とされると思い込んでしまうので、このループから抜け出すのは容易ではない。
気づいた人もいるかもしれないが、相手が心身共に安定しているのであれば、共依存の芽は生まれたとしても、それ程日常生活に支障を来すことはない。
今まで激しく散々な恋愛をしてきた女性でも、ちゃんとした男性と共になり、穏やかな生活を送る例だって沢山ある。
共依存者が陥りがちな回避依存者との恋愛
共依存が顕著になるのは、恋愛相手が回避依存者であるパターンが多い。
共依存者と回避依存者は惹かれ合うことが多く、それはもうN極とS極の磁力並みの強さだ。
今回は回避依存についての詳細は省くが、簡単に言えば、”親密で心が休まるような恋愛関係を形成出来ない者”で、“幸せになるのが怖い人たち”とも言える。
愛や幸せが怖い回避依存者
回避依存者は、恋愛初期においては、共依存者が望む身の毛がよだつぐらいの甘い言葉や行動を取るが、時間が経ち、二人の間にある感情が恋愛感情から安心感などの長期的な感情に移行していくタイミングで相手から離れようとする。
相手からいきなり拒絶のような態度を取られた共依存者は驚き、相手に縋るような言動やモノで釣ろうとする。
それでも、回避依存者は逃げてしまう。
健全な恋愛であるならば、もうこの時点で終わりなのだが、共依存者と回避依存者はそうはいかない。回避依存者は愛されたいけど、愛が怖くて逃げる。
共依存者も愛されたくて、相手に縋ると思うのが普通だが、そうじゃない。共依存者の深層心理は、“安心が怖い”なのだ。
だから、回避依存者から拒絶されたり、場合によっては暴言を吐かれたりしても、逃げることは無い。
異常な状態に安心感を抱いてしまうから、恋愛のイタチごっこを止められないということになる。
共依存者の心理…「安心が怖い」の意味とワケ
普通の人なら、「安心が怖いって意味が分からない」と言うだろう。その気持ちは大いに分かる。
そこで一度、想像してみてほしい。
自分が仮に銃弾が飛び交う戦地で生まれ育ったとする。
死体が転がる道、漂う血の匂い、何日間も空腹で過ごすのは当たり前。いつ自分が死ぬかも分からない。
そんな状態から一転して、平和で綺麗で人が死ぬことはおろか、戦闘機さえも飛んでいない。24時間お腹いっぱい食べられる。
今までに殺伐とした環境から、 突然180度異なる環境に身を置かれたとしたら、どう思うだろうか?
果たして、最初から意気揚々と生活を送れるだろうか?
いくら素晴らしい環境だったとしても、私ならこう思ってしまう。「怖い」「どうせまた昔に戻るよ」と。
毒親に育てられると共依存者になりやすい
共依存者の”安心が怖い”の理由はまさにこれだ。
共依存者について調べてみると、高確率で毒親の元で育っている。
親との関係が起因になるのは回避依存者も同じだが、共依存者の場合、『条件付きの愛』や『親の顔色を伺わなければいけない環境』という要素が強く、それが成長して恋愛をした時の弊害と化してしまうわけだ。
最初にも書いた私に恋愛相談をしてきてくれた子たちにも、「昔、親に何か言われて心に残っていることがあったりする?」と聞けば、毒親とまではいかなくとも、彼女たちが未だに苦しめられている『自己肯定感の低さ』に繋がる出来事は必ずと言っていい程あった。
幸せな恋愛をするために
恋愛と簡単に言っても、深く掘り下げてみれば、自分の深層心理や親子関係にも向き合わなければいけないぐらい大切なことだ。
お互いに理解し合うことが恋愛の醍醐味で、他者を理解するならば、自分を理解しなければいけない。
相手を通して自分を見つめなおすのも手だが、恋愛で悩みを抱えた時は、深く自分と向き合うのが最善策だろう。
どうしたいか、どうすればいいか。
それらのヒントも解決法も、 全部自分の中に潜んでいる。
それを見つける為にも、『恋愛依存 (共依存)』のような知識はあっても困らない。
自分を知り、許し、受け容れる。そして、愛する。それこそがスタートラインなのだから。