
株式会社メンヘラテクノロジー代表取締役
らんらん
2018年8月に”彼氏を束縛したい”という想いから、株式会社メンヘラテクノロジーを設立。
これまでにアプリ「愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きなので歩く」や、彼氏が不在の際に気を紛らわせる女性向けサービス「カノジョ・シッター」をリリース。
東京工業大学大学院修士課程1年。自然言語処理を用いて彼氏との喧嘩を防止するためのツールを開発中。
過去出演番組:『アウト×デラックス』(フジテレビ系)『TV チャンピオン 極〜KIWAMI〜』(テレビ東京系)『指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男選手権』(AbemaTV)
Twitter:@pascarrr
今年の8月で、株式会社メンヘラテクノロジーを設立して1年が経ちました。
まだまだ何もない会社ではありますが、1年間で会社としても私個人としてもいろいろな変化がありました。
この場を借りて、1年を振り返りながらメンヘラテクノロジーのこれまでとこれからの野望について語ってみようと思います。
彼氏の会社の社員旅行においていかれるのが嫌で、起業
もともと私は経営者を志していたわけでも、起業にすら興味はなかった。同年代の起業家たちはとにかく熱くて、ギラギラしているイメージがあり、むしろ苦手だった(正直に言うと、いまも苦手)。
メンヘラテクノロジーを設立する前まで、私は大学に通いながらフリーランスのライターをしつつ、ただただ彼氏に依存している女子大生だった。
フリーランスとして仕事をしているという点で意識が高いと思われがちだが、全くそんなことはなく、時間の縛りがある普通のアルバイトは彼氏と一緒にいたいときに辛くなるため、できなかっただけ。
ライターの世界のひとたちは、起業家たちの世界とは対照的だった。もちろんハードな面はあるが、自分の感性の赴くままに、自由に生きている人がたくさんいる印象があり、私もそうなりたいと憧れを抱いていた。
彼氏の会社の役員になりたくて大喧嘩
そんな私の依存先であった8歳上の彼氏は、イベント制作を行う会社の社長をしている。
ある日、彼氏の会社のチャットワークを覗き見ると、社員旅行に行くという計画が立ち上がっているのを発見した。それを見て、私を置いて彼氏が会社の人たちと旅行を楽しむ様子を想像すると、苦しくて発狂しそうになった。
そこで、私は社員旅行についていくため、ひいては彼氏の仕事に干渉するため、「私を会社の役員にしてほしい」という提案した。
しかし、彼氏は「社会人経験もないんだから無理だよ」とまともに取りあってくれず、それでもしつこい私にしびれを切らし、大喧嘩へと発展。
その喧嘩の末、彼氏から
起業でもして、他の社員が納得できるような実績があれば、役員にしてあげる
と条件が出た。私はその条件をクリアするため、起業することにした。
昨日、「どうして私を社外取締役にしてくれないの?!」と彼氏と喧嘩して「ちゃんと起業してサービス出せたらしてあげる」というところで落ち着いたので、起業しようと思う。仲間集めしたい。仲間集め…どうやったら仲間集めってできるんだろう。あ、事業案はある。
— らんらん🤖❤️メンヘラテクノロジー (@pascarrr) 2018年7月5日
そんな経緯で起業してしまったため、特にやりたいサービス案もない状態。起業家の先輩たちから「自分が持っている課題を解決するサービスを作るのもひとつの方法だよ」とアドバイスを貰い、それに忠実に従ってみることにした。
私が抱える最大の課題は「メンヘラ」であること(だと思っていた)。私の生活の中心は恋愛。構って欲しい気持ちが強くて、何度もぐちゃぐちゃな恋愛を繰り返してしまう。
受験も、浪人も、大学生活も、恋愛が原因で失敗した。彼氏と喧嘩をしたら学校にいけなくなるし、彼氏と一緒にいたいがために学校を休んでしまう。
冷静に考えたら、彼氏の会社の社員旅行に置いていかれるのが嫌だからといって「起業」というリスキーな選択をすること自体、どうかしているのかもしれない。もしメンヘラじゃない私がいるなら、絶対に止めている。
そこから、メンヘラの生きづらさを解決するためのいろいろなサービスを考え、ようやく形になりそうなのが「メンヘラせんぱい」。
「メンヘラせんぱい」は、メンヘラのためのチャット相談アプリ。
メンヘラが病んだときに、すぐに相談できる相手と環境を提供する。現在はまだプロトタイプしかないが、アプリのリリースに向けて開発を進めている。
メンバー募集に100人以上からの応募
今年の8月30日、朝日新聞の朝刊でメンヘラテクノロジーについて取り上げてもらった。
AIで「メンヘラ」救う 開発の院生、過去と恋と今の夢 https://t.co/iZiIarQuIA
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) August 30, 2019
この新聞記事を読んだ人たちがツイートが拡散され、多いものだと4万リツート以上されていていた。
これには私自身も驚き、急遽サービス開発のメンバー募集を出した。
まだまだ募集しています⚡
メンヘラテクノロジーの世界観に共感してくれるメンバー募集中
https://t.co/FQwUXm4cS1 #bosyu— らんらん🤖❤️メンヘラテクノロジー (@pascarrr) August 30, 2019
すると、さらに驚いたことに100名以上の方から応募があった。
応募コメントを見てみると、私たちが解決したい課題に共感してくれている人が多く、自分もそこに携わりたいという強い思いが書かれており、すごく嬉しい気持ちなった。
さらに嬉しかったのは、自分がメンヘラであることやこれまでにした辛い経験について、打ち明けてくれた人が沢山いたこと。
通常、エントリーシートや自己PRでは絶対書かないような内容なので、打ち明けるのには多少なりとも勇気が必要だったと思う。それでも、私たちの世界観に共感してくれていることを示すために、そのような内容を打ち明けてくれてくれたことが本当に嬉しかった。
ここまで私の話ばかりをしてしまったので、これからメンヘラテクノロジーに加わってくれる予定の2人のメンバーの話も紹介したいと思う。
2人とも、私と同じように彼氏を思う気持ちをモチベーションに頑張っている。
1人目は、フロントエンジニアとして応募してきてくれたAさん。
Aさんは、新卒で不動産会社の一般事務職に就職する予定でプログラミングの経験なども一切なかったにも関わらず、それをやめてエンジニアを目指すことにしたという。
その理由を聞いてみると「エンジニアの彼氏と仕事の話ができたり、仕事の手伝いができたりしたらいいなと思って…」と話してくれた。
Aさんの彼氏はフリーランスのエンジニアだそうで、基本的にリモートで仕事を行なっているため頻繁に海外旅行に行ってしまい、寂しい思いをすることがあるのだとか。だから、
自分もフリーランスで食べていけるようなエンジニアになって、彼氏と一緒に海外旅行に行けるようになりたい
と言っていた。
2人目は、デザイナーとして応募してきてくれた大学生のNちゃん。Nちゃんは現在、大学でUXデザインを専攻している大学3年生。
社会人として働きながら資格を取るために勉強を頑張っている彼氏の姿を見て、「私も頑張らなきゃいけない…!」と日々思うという。
彼氏が勉強を頑張りやすい環境を作るためにも、自分自身も本気で勉強に取り組まなくてはいけないと感じていて、デートのときは必ずタイマーで時間を測り、2人で勉強に取り組む時間を作っているそうだ。
たまにお金がピンチになる彼氏のことを見ていると、将来的に彼氏のことを支えられるようになりたい
と思い、ますます技術を身につけようと「頑張んなきゃ!」という気持ちになるという。
メンヘラテクノロジーの野望
大学で就職活動に勤しむ友人たちから「自分がやりたいことがわからない」とか「社会をどうしたいとかあんまりない」という声をよく聞く。
私も全く同じだ。
自分の将来に対する壮大な計画なんてないし、世界が平和になって、もっとみんなが幸せになれる社会になったらいいと思うけど、それのために自分が尽力するというイメージを持つことができない。
ここから書く内容については、できれば投資家の皆さんには見て欲しくないのだが(笑)、私個人としては、「全世界のメンヘラを幸せにしたい」とかスケールが大きくて高尚な目標はない。
私は、やっぱり彼氏に認めてもらうために事業を大きくして、成果を出したい。そこは起業する前と変わらない。
当初は数年でそこそこの金額でバイアウトできれば成果として十分だし、彼氏の会社の役員にもしてもらえると思っていたが、どうやら彼氏も本気で起業するとは思っていなかったらしい。
したがって、数年でそこそこの金額でバイアウトできても、彼氏の会社の役員になることはできないことが分かった。じゃあ、買収するしかない。
買収して彼氏の会社の経営権を握れたとして、彼氏の会社の社員旅行に連れて行ってもらえるのかは分からないが、メンヘラテクノロジーを大きくしていかなくてはならないという覚悟が決まった。
そんな感じで、相変わらず私のモチベーションは彼氏が好きな気持ちにあるし、上で紹介したメンバーもそれに近い。仕事に恋愛を持ち込むことは良しとされないことが多けど、私は中途半端に「社会を良くしたくて…」などと言っている人よりもよっぽど信用できると思う。
頑張る理由が「好きな人のため」でも、それが社会にとって悪いことでなければ全然いいと思うし、その気持ちをすごく肯定したいし、肯定されたい。
結果、1mmでも社会のためになるものであればもう、なんか、すごいと思う。
いまはまだ会社の規模的にリソースも限られていて、基本的にはスキルや経験があるメンヘラしか採用することしかできないが、メンヘラが好きな人を思う気持ちには大きな可能性があると思うので、もっと規模が大きくなったら、いろんなタイプのメンヘラと仕事がしたい。
メンヘラテクノロジーはそんなメンヘラたちの可能性を最大限に活かせる会社になりたい。
ゆくゆくは、ハイスペックなメンヘラが集まり、ハイスペックなメンヘラをどんどん輩出できるような会社になれたら面白いと思う。それがメンヘラテクノロジーの密かな野望だ。
(ちなみに、メンヘラしか採用しないわけでは全くありません。)
イラスト:はぁか(@hacca1997)